アルツハイマー病の発症にはβアミロイドの産生促進以外にも、ネプリライシン依存のβアミロイド分解の抑制、タウ蛋白質リン酸化の促進、グリア細胞におけるβアミロイド貪食の抑制なども関与している。そこでこれらの現象に対するEP_2、EP_受容体アゴニスト・アンタゴニストの効果を検討し、アルツハイマー病におけるEP_2、EP_4受容体の役割の全体像を明らかにするのが本研究の目的である。この研究は、EP_2、EP_4受容体どちらのアンタゴニスト(あるいは両方ともに作用するアンタゴニスト)が、アルツハイマー治療薬としてより有望かを判断するために必要である。今年度我々は、グリア細胞におけるβアミロイド貪食に対するEP_2、EP_4受容体アゴニスト・アンタゴニストの効果を検討した。その結果、EP_4受容体アゴニストが、グリア細胞におけるβアミロイド貪食を阻害し、EP_4受容体アンタゴニストが逆に促進することを見出した。以上の結果は、EP_4受容体はこれまで知られていた、受容体の内在化、γセクレターゼの活性化を介して、βアミロイドの産生を促進するだけでなく、グリア細胞におけるβアミロイド貪食の阻害も介して、アルツハイマー病の進行を促進している可能性を示している。また我々は、EP_4受容体アンタゴニストを脳内に直接投与した場合にはβアミロイド産生を抑制するが、静脈から投与した場合には抑制しないことを見出した。即ち、この薬剤は脳内移行しない、即ちBBB(血液脳関門)を通過しない薬剤であると考えられるので、DDS技術を用いて脳内移行させる方法を現在検討している。
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