HAF-2は、リソソームに発現するABC輸送体TAPLの線虫ホモログの一つであり、神経系、筋肉、腸第一細胞、およびシエロモサイト(貪食細胞の一種)で発現する。細胞内物質代謝や異物排除に関わるリソソーム関連ABC輸送体の生理機能を明らかにする目的で、以下の解析を行った。 GFP融合型HAF-2(HAF-2 :: GFP)遺伝子を染色体外アレイとして導入した線虫を用いて、HAF-2 :: GFP発現組織における細胞内局在の解析を行った。HAF-2 :: GFPは、体壁筋、咽頭筋、および腸第一細胞においては粒状に散在していたが、シエロモサイトにおいては、細胞内顆粒上にリング状に局在していた。神経系では、細胞体および神経突起の両方に局在が観察されたが、発現する細胞の種類や発現レベルに個体差がある為、染色体外アレイを安定的に染色体に導入した系統の作出を試みている。 初年度は、細胞内オルガネラや貪食活性に関する解析が他の組織よりも進んでいるシエロモサイトにおけるHAF-2の解析を進めた。オルガネラマーカーを用いた観察の結果、HAF-2 :: GFPは、リソソームマーカー蛋白(ASP-1 :: DsRed、LMP-1 :: mRFP)が局在する顆粒の表面に局在し、初期エンドソームマーカー(2xFYVE :: GFP)陽性顆粒には局在しなかった。これらの結果は、シエロモサイトにおいてHAF-2がリソソーム様オルガネラに局在している事を示している。 次に、haf-2欠損変異体を用いて、haf-2の欠損がシエロモサイトの顆粒形成、および異物(分泌型GFP)の取り込みに与える影響を調べた。その結果、いずれにおいても野生型との差異は見出されなかった。 しかしながら、haf-2欠損変異体が、成長遅延(低温飼育下)および短寿命を示すことを見出しており、今後、内的あるいは外的ストレス条件下での表現型の解析を進める。
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