カドヘリンによる細胞間接着の低下はβカテニンの核内機能を亢進し、細胞のがん化に寄与すると考えられている。申請者は膜輸送制御因子ARF-GTPase activating prontein(ARE-GAP)であるGIT1ががん抑制遺伝子産物TSTIC1(Tumpor Suppresson in lung cancer 1)と複合体を形成することを最近見出した。TSLC1も細胞間接着因子であるため、「TSLC1がカドヘリンの膜輪送を制御することによって、βカテニンによるがん化シグナルを抑制する」という仮説を立てた。この仮説の検証を目的とし、以下の実験を行った。 1. TSLC1のGIT1結合領域を同定する目的で、TSLC1細胞質領域の変異体の発現系を太陽菌及び哺乳類細胞を用いて構築した。in vitro結合反応と免疫沈降反応を行った結果、TSLC1細胞質領域のうち膜貫通領域近傍がGIT1との複合体形成に重要なごとが明らかとなった。 2. 内在性TSLC1発現を欠く肺がん細胞株A549に外来性TSLC1を発現させ、カドヘリンのエンドサイトーシスや細胞間接着構造への影響を観察した。現在のところ、カドヘリンのエンドサイトーシスへの影響は観察されていない。しかし、外来性TSLC1がβカテニンの核内移行を阻害する傾向が見出され、カテニンによるをも抑制するごとが明らかつとなってきた。さらに、この転写活性の抑制がARF-GAP阻害剤処理によって減弱することも明らかとなった。これは、TSLC1がARF-GAP活性を介してβカテニンの転写活性を抑制することを示唆する結果である。
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