本年度は、sPLA2-IIAおよびケモカイン群の発現に関与するPhospholipid X(s)の解析およびPhospholipid X(s)合成に関わるアシルCoA合成酵素(Acsl)の同定を行った。 Phospholipid X(s)の同定 : 本年度の検討ではこれまでの固相抽出カラムより分離の良い順相HPLCカラムを用いて脂質画分を分画し、各溶出フラクションについてsPLA2-IIAおよび各種ケモカイン発現誘導活性を検討した。その結果、これまでのSep Pak Silica固相抽出カラムを用いた解析では、sPLA2-IIAの発現を誘導する活性は主にPCを含む画分のみに存在していたのに対して、今回の分離条件では、PCを含む画分に加えて新たにPE/PIを含む画分にも活性が溶出されることが明らかとなった。また、同時にケモカイン発現についても検討した結果、Cxcl10、Cxcl11、Cxcl12、Cc13、およびCcl5の発現は、PC及びPE/PI画分に溶出されることが明らかとなった。現在、これらの画分をさらに逆相HPLCにより分離し、質量分析を行うことにより構造の決定を目指している。 Phospholipid X(s)合成に関わるAcslの同定 : サイトカイン依存的なsPLA2-IIAの誘導がTriacsin C (Acsl阻害剤)で抑制されることを明らかとしている。そこで、各Acsl shRNA安定発現株の作成および一過的なsiRNAの導入による各Acslをノックダウンした際のsPLA2-IIA発現に対する効果を検討した。1)Acsll及びAcsl4shRNA安定発現細胞において、sPLA2-IIAの発現は有為に抑制された。2)各Acsl siRNAを用いて、一過的にノックダウンを行った場合、Acsl4のsiRNAによりsPLA2-IIAの発現が抑制されたのに対して、Acsl1のsiRNAでは抑制されなかった。以上より、Acsl4はPhospholipid X合成に直接関与し、一方Acsl1は間接的(細胞中の脂質組成に影響を与えていると考えている)に関与することが考えられた。
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