本年度はPhospholipid x (PLX)の作用機構を明らかとすること目的とし、PLX受容体に関する検討及びシグナル伝達に関する検討を行った。これまでの解析で、PLXはホスファチジルコリン(PC)様の構造を有する可能性が高いことを見いだしている。そこで、PLXの作用がPC様の生理活性脂質である血小板活性化因子(PAF)の受容体を介して作用を発揮している可能性を考え、sPLA2-IIAタンパク質発現に対する3種のPAF受容体アンタゴニストの効果を検討した。その結果、CV-6209は用量依存的にsPLA2-IIAの誘導を抑制したのに対して、BN52021及びCV-3988は抑制しなかった。さらに、PAF受容体siRNAを用いてPAF受容体をノックダウンさせた際のsPLA2-IIA発現を検討した結果、対照と差は認められなかった。従って、PLXは、PAF受容体とは異なるCV-6209感受性の受容体を介してsPLA2-IIA発現誘導に関与していることが考えられた。PLX受容体はPAF受容体アンタゴニストの感受性からPAF受容体と近縁の構造を持つ可能性が考えられるので、現在これらについてさらに検討を行っている。各種シグナル伝達分子阻害剤のIL-1β依存的なsPLA2-IIA発現誘導に対する効果を検討した結果、PKCの阻害剤であるchelerythrineおよびGF109203Xの添加によりsPLA2-IIAの誘導が抑制された。shRNAによりPKCアイソザイムをノックダウンし、sPLA2-IIA発現に対する効果を検討した結果、PKCλ/ιのノックダウンによりsPLA2-IIAの誘導が著しく抑制された。以上の結果より、PKCλ/ιがsPLA2-IIAの誘導に関与する分子であることが明らかとなった。現在、PKCλ/ιがPLX受容体の下流で機能している可能性を考え検討を続けている。
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