研究成果 【具体的内容】 1. コンドロイチン-4-O-硫酸基転移酵素-1(C4ST-1)を欠損した細胞においてWnt-3aに対する応答性が低下すること、およびC45T-1の発現レベルによってWnt-3aシグナル伝達が調節されることを明らかにした。 2. Wnt-3aがC4ST-1によって合成される糖鎖構造と高い結合親和性をもつことを明らかにした。 3. 細胞は、C4ST-1の発現レベルの調節を介して細胞表面に発現する糖鎖の構造を変化させ、Wnt-3aの結合/解離を制御し、細胞表面のWnt-3a量を調節することによってWnt-3aシグナルを微細に調節することがわかった。 【意義・重要性】 細胞はC4ST-1の発現レベルを厳密に制御することでWnt-3aに対する応答性を微細調節していると考えられる。一般に、形態形成因子の濃度依存的に細胞応答が調節されるモデルが提唱されているが、今回の結果から、たとえ同じ濃度であっても、形態形成因子に対する結合能を細胞自律的に変化させることで異なる応答反応を起こすことができる可能性が示きれた。細胞はC4ST-1の発現レベルを制御することでWntに対する応答を調節すると考えられる。 C4ST-1を欠損させたマウスでは軟骨形成過程が正常に進行しないこと、グリコサミノグリカンの合成異常がWntのシグナル伝達を変化させ変形性関節症が発症する可能性なども示されている。これらの知見と今回得られた結果を統合すると、C4ST-1の発現異常がWntシグナルの機能不全を引き起こし、変形性関節症の病因の一つになっている可能性が考えられる。
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