研究概要 |
(1) C4ST-1によるWnt3aの拡散の調節 a. Wnt3aを安定に発現するマウス線維芽細胞(L細胞)にC4ST-1を導入した安定発現株を樹立し、C4ST-1の発現量の異なる複数のL-Wnt3a-C4ST-1細胞を得ることに成功した。 b. 作成したL-Wnt3a-C4ST-1細胞が分泌するWnt3aの量を高感度に測定するレポーターアッセイ系の構築に成功した。 c. 上記のa,bで作成した細胞や確立した実験系を用いて、Wnt3a産生細胞が分泌するWnt3aの量がC4ST-1の発現量に伴い減少し、逆に細胞に保持されるWnt3aが増加することを明らかにした。 【結果の意義】Wnt3aは非常に粘着性の高い性質をもつので、分泌後は細胞表面や細胞外マトリクスに結合して存在するが、産生細胞はC4ST-1の発現レベルを調節し、細胞表面や細胞外マトリクスの糖鎖構造を変化させることによって、Wnt3aの拡散を促すことがわかった。C4ST-1の発現を調節することがWnt3aの拡散開始のスイッチ機構の一つとして機能することを見いだせたことは学術的に意義深い。 (2) Wnt3aによるC4ST-1の転写調節機構 C4ST-1の発現は、Wntシグナルによって制御されることを見いだしているので、この転写調節機構を調べるため、C4ST-1遺伝子の5'非翻訳領域をルシフェラーゼの上流に組み込んだレポーターベクターと、その欠失変異体を作成した。これらの解析により、C4ST-1の負の調節に関わる責任領域を絞り込んだ。 【結果の意義】今後、Wnt3aによるC4ST-1の転写調節に関わるDNA配列を決定し、転写調節に関わる因子を同定することができれば、C4ST-1の遺伝子発現を操作することで、Wnt3aシグナルを人為的に調節できる可能性がある。
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