研究課題
当研究室(癌研分子薬理部)では、PI3Kを標的とした抗がん剤候補物質ZSTK474を世界に先駆けて見出し、臨床試験に向けて開発を進めている。研究代表者らはこれまでに、ZSTK474による抗がん効果は細胞周期停止(GO/G1アレスト)により引き起こされ、アポトーシスはほとんど誘導しないことを複数のがん細胞株を用いて明らかにしてきた。本年度、PI3K阻害剤による抗がんメカニズムをさらに詳細に調べるために、PI3K触媒サブユニットPIK3CAのホットスポット変異株(MCF7・HCT-15・SK-OV3)やPTEN欠損株(KM-12・PC-3)を含む10種類以上のがん細胞株を用いて、ZSTK474および他のPI3K阻害剤GDC-0941、BEZ235を暴露した。その結果、in vitroにおいてすべての細胞株で顕著なアポトーシスを認めず、GO/G1アレストを誘導した。また、in vivoにおいて、これらのがん細胞株由来のゼノグラフトに対するZSTK474の効果を検討したところ、すべての腫瘍で顕著な増殖抑制が認められた。ZSTK474投与後の腫瘍塊におけるアポトーシスおよび細胞増殖をTUNELアッセイおよび増殖マーカーKi67の免疫組織化学染色により検討したところ、アポトーシス細胞は出現せず、Ki67の顕著な発現抑制が認められた。以上のことから、PI3K阻害剤は一般に、PIK3CA/PTEN異常がんにおいてGO/G1アレストを誘導することにより抗腫瘍効果を発揮するものと結論された。
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