[新規化合物評価系の構築]平成20年度に引き続き、ケモカイン受容体CXCR4への化合物の結合を非放射化学的な方法により検出する生物活性評価系の構築を検討した。まず、CXCR4拮抗剤由来の蛍光プローブを用い、プローブの受容体への結合量をフローサイトメトリーにより定量する方法を検討し、FC131をはじめとする各種CXCR4リガンドの簡便な活性評価法として有効であることを見出した。また、内因性リガンドSDF-1を修飾した各種蛍光プローブのうち、C末端側に蛍光団を導入した誘導体が非標識体と同等の結合親和性を維持していることを確認し、細胞内における受容体局在を指標とする化合物評価系に有用であることを明らかにした。さらに、コイルドコイルペプチドを用いた受容体標識法により細胞膜表面上のCXCR4を定量し、SDF-1-CXCR4相互作用の検出により化合物を評価する系を確立した。これらにより、従来の放射活性リガンドを用いた系とほぼ同等の高い感度でのスクリーニングが実現可能であることが示唆された。 [新規評価系の実用性検証のためのCXCR4拮抗剤の構造活性相関研究]平成20年度に引き続き、CXCR4受容体の分子認識様式の解明を指向したFC131誘導体の構造活性相関研究を展開した。FC131のD-Tyr-Argジペプチド部位のペプチド結合の配向が、CXCR4拮抗活性に重要であるとの知見をもとに、この部位にさまざまな置換様式のアルケン型ジペプチドイソスターを導入した各種誘導体を合成した。活性評価およびNMRスペクトルに基づく構造解析の結果、それぞれのアミノ酸残基の立体配置に加え、Tyrのカルボニル酸素とArgの窒素原子上の置換基の両方が、この部位のコンフォメーション制御に寄与していることを明らかにした。
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