本申請研究の目的は、希少疾病である潰瘍性大腸炎に対する治療効果の期待できる新規医薬候補物質の創出である。研究期間内の最終目標として潰瘍性大腸炎のモデル動物に対し有効と認められる化合物を一つ以上創出することを掲げ、下記の研究実施計画に従い新規化合物の創出ならびに、その活性評価を行った。 研究手段としては、化合物合成のみならず、in vitroにおける活性評価、in vivoにおける活性評価も行った。 1) RXRアゴニストのRXR-PPARγ活性化能の評価:核内受容体の一つであるペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)の一つであるPPARγを活性化することで潰瘍性大腸炎モデルにおける抗炎症効果が説明されている。PPARは核内受容体であるRXRとヘテロ二量体を構築し機能することが知られるほか、PPAR-RXRはRXRアゴニスト単独でも活性化されることが知られる。我々は、種々のRXRアゴニストを創出してきたこともあり、まずこれらの開発化合物によりPPARγ-RXRが活性化されるかを調べた。その結果、いずれのRXRアゴニストともPPARγ-RXRを活性化することを確認した。 2) 潰瘍性大腸炎に有効と思われる化合物の創出:レチノイン酸受容体(RAR)βを標的とするアゴニストはcyclinD1発現抑制が示唆されていることから、新規なRARβアゴニストの創出を行った。 3) 核内受容体拮抗物質の創出:着目した核内受容体に対する拮抗物質を、これまでに収集した構造活性相関研究に基づき新規に創出した。 4) 病態モデル動物の構築と開発化合物の有効性確認:DSS誘発潰瘍性大腸炎モデルマウスまたTNBS誘発クローン病モデルマウスを構築し、開発化合物の投与により、開発化合物の有効性を確認した。
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