研究概要 |
レチノイドXレセプター(RXR)のリガンド分子は癌のみならずメタボリック症候群の原因である高脂血症や糖尿病の治療薬としての可能性を秘めている。私はRXRのリガンドである9Z-レチノイン酸を母核とする誘導体のうち、シクロヘキセン環をテルペノイド由来の脂肪環に変換した誘導体を合成し、RXRに対するアゴニスト活性について評価することを研究目的とした。なお本研究は、テルペノイドを9Z-レチノイン酸の疎水性ユニットに組み込んだ、従来にはない独創的なリガンド分子の創製であり、また分子モデリングソフトを用いた予備調査においても一連の化合物群はRXRに対して良い相関を示したことから、高い研究成果を期待した。 私は本目的を達成すべく、初めにStilleカップリングを鍵反応とする9Z-レチノイン酸の短工程合成法を独自に開発し、また共通の合成中間体を用いた9Z-レチノイン酸誘導体の効率的合成法を確立した(Chem. Commun. 2008, 6330.)。本研究で合成した誘導体のうち、ナフタレン環を有する新規レチノイドが高いRXR選択性を示すことを見出すこともでき、現在論文投稿中である。さらに、上記の目的に示したテルペノイドを組み込んだリガンド分子を、本手法により計12種類合成することにも成功し、この中で5種類の誘導体について高いRXR選択性を示すことを見出した。また本研究過程において3-ヨードベンゾ[b]フランの新しい合成法を発見し、その一般性を確立することにも成功した(Org. Lett. 2008, 10, 4967.)。
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