研究課題
本研究で目的としている三型分泌機構を標的とした抗細菌症薬は従来の抗菌薬と異なり菌を殺さずに病態の進行を抑制できると考えられる。そのため従来の抗菌薬の持つ「耐性菌の出現」、「毒素の大量放出」、「正常細菌叢の撹乱」などの問題を克服できると予想される。既に確立済みの評価系で微生物の培養液など約11,000サンプルをスクリーニングした結果、バングラディシュ土壌由来放線菌KO6-0804株の培養液に本活性を見出した。本株培養液の精製を行った結果、三型分泌機構阻害物質としてaurodoxを単離同定した(また、別の放線菌培養液からaurodoxの類縁物質であるfactumycinを活性物質として単離同定した)。Aurodoxは三型分泌機構に依存した溶血反応を選択的に抑制(溶血阻害活性 : IC_<50>=1.2μg/mL, 抗菌活性 : IC_<50>=40μg/mL、選択性32倍)した。その作用点を明らかにするためにSDS-PAGEおよびW6stern Blottingによる解析を行った結果、aurodoxが三型分泌機構に関連する病原性タンパク質の発現を特異的に阻害することが明らかとなった。さらにReal-Time PCRを用いて病原性遺伝子の転写量を調べた結果、aurodoxは三型分泌機構関連の遺伝子領域(LEE領域)を調節するregulatorであるlerの転写量を有意に抑制していた。この結果はaurodoxが三型分泌機構の転写に関与する何らかの因子に影響を及ぼして阻害活性を示すことが示唆している。さらにCitrobacter rodentiumを用いたC3H/HeJマウスの感染実験系においてaurodoxは菌の腸管への付着を抑えることで高い治療効果を示した。これまで数例の三型分泌機構阻害剤の報告があるがin vivoで治療効果が報告されている物質は本研究で見出したaurodoxが初めてであった。
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ページ: 222-229
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