研究概要 |
キリンビール(株)によって開発されたKRN7000は、免疫細胞の一種ナチュラルキラーT(NKT)細胞を活性化させて抗腫瘍活性を誘導する糖脂質である。2007年に報告されたX線結晶構造解析の結果、KRN7000(alpha-GalCer)のガラクトース部位の6-位の水酸基は、何れのアミノ酸残基とも水素結合を形成していないことが明らかとなった。これまでに数多くの類縁体の合成研究が報告されているが、水素結合を形成している水酸基を他の官能基へと変換した類縁体は、その殆どが活性の低下を招いている。従って、水素結合を形成していないKRN7000の6-位水酸基は、修飾可能であると考えた。6-位水酸基に関して種々の類縁体を合成して構造活性相関研究を行ったところ、6-O-メチル化体,(RCAI-61)など、6-位水酸基部位を疎水性官能基に変換した類縁体は、mouse in vivo試験において強力にIFN-gammaを産生誘導することが明らかとなった。なかでもRCAI-61は、これまでに報告されているどの類縁体よりも強力にIFN-gammaを産生誘導する活性を有している。また、非常に低濃度においてもKRN7000よりも強い活性を示すことから、患者への負担の少ない、新規抗腫瘍薬としての応用が期待される。ドッキングモデルを計算した結果、KRN7000の場合では6-位水酸基は糖脂質の提示蛋白質であるCD1d蛋白質の外坤こ提示されているのに対して、RCAI-61においては、6-位のメトキシ基はCD1dの疎水性結合サイトに深く潜り込んでいることが明らかとなった。この結合様式の違いがIFN-gammaの産生量の差を生んでいる可能性が示唆された。
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