現在、HIV感染症/エイズに対する治療法は、ウイルス性酵素を標的とする逆転写酵素(RT)阻害剤やHIV-1 protease阻害剤等を組み合わせた抗レトロウイルス療法(ART)であるが、ARTの導入以来、体内のウイルス複製を効果的に抑制することが可能になった。しかし残念なことに、ARTは根治療法ではなくHIV-1を完全に体内から排除することができないことから、抗HIV薬を生涯にわたり服用し続けなければならない。そして現行ARTで避けられない深刻な問題は、薬剤耐性HIV-1出現である。そこで本研究では、薬剤耐性ウイルス出現回避及びウイルス弱毒化を指向したHIV-1複製制御法を確立すること目指している。これまでに、複数存在するN-myristoyltransferase(NMT)のisozymeの中で、NMT1LがHIV-1の産生と密接に関連することを報告してきた。本年度はNMTのリボゾーム局在機構の一端を解明することができた。この知見をもとにリボゾーム局在型NMTを特異的に阻害する戦略の構築が加速され、将来NMTを標的としたより特異性の高い新規のHIV-1複製制御法開発に発展すると考えられる。
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