研究課題
平成20年度において、まずウサギ腸管ループ実験を用いてStx毒性評価系を確立した。本系によりペプチド性Stx2阻害薬PPP-tetのStx2阻害効果の検討を行った結果、PPP-tetはStx2による腸管内の体液貯留、組織破壊を効率よく阻害することが示された。またウサギ摘出腸管片を用いて標識PPP-tetとStx2の局在性を観察したところ、PPP-tetはStx2の上皮細胞内への侵入は阻害せず、PPP-tetとStx2が複合体を形成し腸管上皮細胞内へ蓄積することが明らかとなった。本実験により、個体レベルにおけるPPP-tetの作用部位は腸管であること、さらに標的細胞は腸管上皮細胞であるという重要な知見が得られた。平成21年度は、主に標的細胞培養系の確立と、本細胞におけるPPP-tetとStx2の局在性について詳細な検討を行った。本実験ではヒト結腸細胞由来のCaco-2細胞を用いた。標識PPP-tetとStx2の細胞内局在性を共焦点レーザー顕微鏡により観察した結果、両者の局在性が非常に良く一致すること、このときStx2はゴルジマーカーであるGM130と共局在すること、しかしながらERマーカーのHSP47とは全く一致しないことが明らかとなった。これらのことから、PPP-tetはStx2と複合体を形成し細胞内に取りこまれること、その後Stx2はゴルジ体までは輸送されるものの小胞体への輸送が完全に阻害されること、すなわちPPP-tetのStx2毒性阻害メカニズムはStx2の細胞内輸送異常の誘導にあることが明らかとなった。また小胞体への輸送が阻害されたStx2はリソソームへ輸送され、リソソームにおいてStx2の分解が亢進し、その結果Stx2の毒性が抑制されるものと考えられた。本研究の成果は、PPP-tetの臨床応用にむけて重要な情報を提供するものと考えられる。
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Infection and Immunity 78
ページ: 177-183
Journal of Cell Science 122
ページ: 2218-2227