研究概要 |
申請者が独自に開発した脂肪肝炎モデルマウスに酪酸菌製剤を投与し, 開始後8週目, および16週目で肝臓を回収した.8週目においてすでに酪酸菌製剤は, 肝臓への炎症細胞浸潤, および脂肪蓄積を抑制していた.16週目のサンプルは, 現在検討を進めている. 酪酸菌製剤の作用機序について, in vivo, およびin vitroでの検討を進めている.酪酸菌製剤が腸内で産生する短鎖脂肪酸である酪酸が調から吸収され, 門脈を介して肝臓に到達し, 脂質代謝改善作用, ならびに抗炎症作用を発揮しているのではないかと考え, 門脈血中の短鎖脂肪酸の定量を試みている.培養肝細胞に酪酸をはじめとする各種短鎖脂肪酸を処置し, 脂肪酸合成系, 脂肪酸酸化系, およびコレステロール代謝系遺伝子のmRNA発現を検討した.短鎖脂肪酸の中でも酪酸は特にPPARalphaをはじめとする脂肪酸酸化系遺伝子群のmRNA発現を上昇させることを見出しており, 酪酸菌製剤の作用の一端を説明し得ると考えている.今後は, 酪酸の細胞内シグナル伝達経路の詳細を明らかにし, PPARalphaの発現調節メカニズムについても更なる検討を加える予定である. 現在, 臨床において整腸剤として用いられている酪酸菌製剤が脂肪肝炎に効果を示す可能性が明らかになったことから, 治療へ応用が期待できると考えている.
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