研究概要 |
本申請研究は、副作用の少ない新規の抗腫瘍血管療法の開発を目指し、腫瘍血管内皮細胞へと特異的に取り込まれ、細胞内へと薬物をデリバリー可能な「細胞内侵入抗体」を創製しようとするものである。 H20年度では、新規の腫瘍血管マーカーとして期待される、Robo4, TEM7, TEM8のリコンビナント蛋白質を作成し(次頁Yoshikawa M, et.al., Protein Expr Purif. 2008)、これら3種に既存の血管マーカーであるVEGFR2を加えた4種に対する免疫抗体ライブラリを構築した。本ライブラリは、各々1億種類以上もの多様性を有しており、本ライブラリは、複数種のモノクローナル抗体が単離可能な高品質なものであることが示された。次に、細胞内侵入抗体のハイスループットなスクリーニング法として、蛋白質合成阻害因子PSIFとの融合体によるスクリーニングを行ったところ、Robo4に関しては、わずか1週間以内という短期間で、細胞内侵入抗体の候補クローンを複数得ることに成功した。得られた一本鎖抗体 ; scFvの親和性は、いずれも10^<-9>オーダーと非常に高く、優れたものであったが、最も興味深い点は、その親和性と、細胞内侵入活性が相関しないという事実であった。従って、今回得られたクローンは、単にRobo4に結合するだけでなく、積極的にエンドサイトーシスを誘発する機能を有する可能性を示唆するものであった。現在、TEM7, TEM8, VEGFR2に対しても同様の検討を進めており、来年度に予定している体内動態評価、治療効果の検討の準備を行っている。
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