急性リンパ性白血病(ALL)は、小児で最も多く認められる白血病の一つであり、数種類の抗がん剤やステロイド剤などを組み合わせた化学療法は80%以上の奏功率を示す。一方で、プロトコールに従い治療を行うものの、抗がん剤に起因する重篤な肝機能障害や血液毒性などの副作用がしばしば認められ、その程度は患者個々に大きく異なることから、個人差を考慮した副作用の発現予測ならびにその発現メカニズムの解明がALL治療を進めていく上で極めて重要である。今年度は、ALL維持療法中の患者を対象として、重篤な肝障害発現の有無によって「肝障害群」と「対照群」に分け、遺伝子多型との相関解析を行った。初めに、同意の得られた患者の血液より抽出したDNAサンプルについて、抗癌剤の既知の薬物動態関連遺伝子(薬物代謝酵素、薬物輸送担体)の多型解析を行った。遺伝子多型判定結果と肝障害発現との間に有意な相関関係は認められなかった。次に、HumanHap 300KDNAチップを使用して網羅的遺伝子解析を行ったところ、肝障害群と対照群との間で明確な差を認めた遺伝子座4カ所を同定することができた。このうち、3カ所は同一遺伝子上に存在することから連鎖すると考えられた。また、DNAチップで同定した遺伝子多型は近傍の遺伝子多型とも連鎖することが考えられることから、候補となる遺伝子多型を抽出するとともに、症例を追加して候補となる遺伝子多型について検討した。その結果、10箇所の遺伝子多型が肝障害発現を予測する上で有用であることが示唆された。
|