小児急性リンパ性白血病(ALL)化学療法によって認められる重篤な肝機能障害や血液毒性などの副作用の発現予測ならびにその発現メカニズムの解明が重要である。これまで、ALL維持療法中の患者を対象として重篤な肝障害発現の有無について遺伝子多型との相関解析を行った結果、遺伝子発現部位や薬剤性肝障害発現との関連性からRho GTPase-activating protein 24 (ARHGAP24)とRAS guanyl releasing protein 1 (RASGRP1)が肝障害発現予測に有用と考えられることを報告してきた。そこで、細胞レベルでARHGAP24遺伝子多型の影響を検討する目的で、細胞株におけるARHGAP24の発現について解析を行った。HeLa細胞におけるARHGAP24発現をmRNAレベルで解析したところ、ARHGAP24 mRNAには3種類のvariantが検出された。このうち、variant 1の発現量が最も高く、以下、variant3、variant2の順に発現が低かった。遺伝子多型によってはmRNAのスプライシング過程に影響を与えている可能性があり、遺伝子多型とこれらvariantの発現量の比、また、各variantの発現量と抗がん剤感受性について検討を進めることが重要と考えられた。一方、RASGRP1に関してもvariantの存在が報告されているものの、その発現の臓器特異性についてはARHGAP24同様に情報は皆無である。両遺伝子のvariantを含めた発現解析ならびにその機能解析を進めることがALL治療薬剤に起因する重篤な肝障害発現機構の解明に繋がると期待される。
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