研究課題
ヒト白血病HL-60細胞を低酸素条件下で培養するとHIF-1αが誘導されHIF-1βとヘテロニ量体(HIF-1)を形成する。このHIF-1は低酸素下におけるアポトーシスの誘導、血管新生因子VEGF、解糖系酵素などの標的遺伝子の発現を介して細胞や組織の低酸素応答において中心的役割を果たしている。我々は、チミジンホスホリラーゼおよびその分解産物である2-デオキシ-D-リボースが低酸素下でHIF-1αのユビキチン化を促進することによりHIF-1α発現レベルを抑制することを見出している。HIF-1αの分解は、プロリン水酸化酵素(PHD)によって、HIF-1αの酸素依存性分解ドメインのプロリンが水酸化されることに基づく。プロリンが水酸化されたHIF-1αは、ユビキチンリガーゼであるVon-Hippel Lindau癌抑制遺伝子(VHL)と結合して、ユビキチンプロテアソームのシステムで速やかに分解される。今回、我々は、低酸素下での2-デオキシ-D-リボースによるHIF-1αのユビキチン化促進反応の分子機構を明らかにすることを目的として実験を行った。まず、HL-60細胞を2-デオキシ-D-リボースで処理し、正常酸素下および低酸素下でのVHLの発現をイムノブロット解析およびR下-PCR法で調べたところVHLの発現には影響を与えていなかった。次に、HIF-1αとVHLの結合に2-デオキシ-D-リボースが与える影響を調べるために、COS細胞に、HIF-1αとVHLを強制発現させた後、プロテアソーム阻害剤であるMG-132を添加し、2-デオキシ-D-リボース存在下、低酸素下で5時間培養した。細胞抽出液を採取し、VHLの抗体で免疫沈降後、HIF-1αの抗体でイムノブロット解析を行った。その結果、2-デオキシ-D-リボースは、HIF-1αとVHLとの結合を強めていることが判明した。さらに、PHDは、主に3種類(PHD1/2/3)存在しており、2-デオキシ-D-リボースがPHD1/2/3の発現に影響を与えるかどうかRT-PCR法およびイムノブロット法で調べたところ、PHD1/2/3の発現には影響を与えていなかった。現在、2-デオキシ-D-リボースが、PHD活性やユビキチンプロテアソーム系に及ぼす影響を解析している。
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