本年度は、健常人肝臓(HAB研究機構より入手)を用いTPMTのタンパク質発現量、mRNA発現量及び遺伝子多型解析を行った。40検体を解析した結果、低TPMT活性の検体においてはタンパク質発現量が低く、タンパク質の安定性低下に起因した酵素活性の低下をもたらすTPMT*3A等のバリアントアレルを有していることが明らかになった。平成20年度のヒト癌化細胞株による検討及び本年度の結果から、TPMT活性の個人差は遺伝子多型による影響が強く、DNAメチル化の寄与は小さいあるいはないものと示唆された。 次に、TPMT mRNAの3'非翻訳領域に対するデータベース解析から、TPMT mRNAと結合する可能性が高い数種類のマイクロRNAを同定した。その中でも最も結合性が高いと推測されるhas-miR-24を対象として、ヒト癌化細胞株HepG2、HSC-2、PC-3、A549、HeLa、PK-1、HEK293、LNCap FGC、Caco-2からsmall RNAを抽出し、その発現量の定量を行った。その結果、ヒト前立腺癌由来細胞株を除く他の細胞株ではそのTPMT活性とhas-miR-24発現量の間に良好な逆相関関係が認められた(R^2=0.5486)。なお、各種ヒト癌化細胞株におけるTPMT遺伝子の3'非翻訳領域は、シークエンス解析により配列が同様であることを確認している。さらに、健常人肝臓のうち遺伝子多型を有さない検体について、has-miR-24発現量を測定したところ、ヒト癌化細胞株と同様にTPMT活性と逆相関傾向が確認された(R^2=0.4205)。以上のことから、TPMT活性の臓器間の差あるいは個人差にマイクロRNAが関与している可能性が示唆された。 また、6-MPの代謝酵素群に着目して、ITPase、HGPRT、IMPDH、GMPSのSNPスクリーニングを行い、6-MP療法に影響を及ぼす可能性がある新規SNPをIMPDH2において1種類同定した。
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