本年度は、健常人肝臓及び各種ヒト癌化細胞株のTPMT活性が、マイクロRNA(has-miR-24)によって影響を受けることが示唆されたことから、さらにTPMT mRNAの3'非翻訳領域に結合する可能性があるhas-miR-185、214、609についても発現量解析を行った。その結果、昨年度までにhas-miR-24で確認されたTPMT活性との良好な逆相関関係は認められなかった。次に、has-miR-24が、実際、TPMT活性に影響を及ぼすか否かを検討するため、HepG2細胞を用いてマイクロRNA導入実験を行った。has-miR-24の前駆体を導入することで、HepG2細胞におけるhas-miR-24発現量は未導入細胞と比較して約160倍の発現量増大を確認したが、TPMT mRNA発現量及び酵素活性共に低下は認められなかった。 続いて、6-MP代謝酵素であるIMPDH2の遺伝子多型による影響について検討を行った。昨年度に同定した変異(1534C>T、Arg512Trp)を有する変異型IMPDH2タンパク質を作成し、IMPを基質とした速度論的解析を行ったところ、野生型と比較してkm値の上昇及びクリアランスの低下が認められた。Arg512は、生物間で高度に保存されていることから、本研究結果はこれを支持するものである。 さらに、抗癌剤をはじめとする薬物動態研究の新規研究ツールの作製を目的に、iPS細胞の肝分化誘導研究を行った。その結果、ヒト線維芽細胞由来iPS細胞から樹立した肝分化iPS細胞において、CYP3A4等の主要なP450分子種及びAhR、CAR、PXR等の転写因子の発現を確認した。また、この肝分化iPS細胞は、肝分化マーカーの発現等からその機能は胎児肝細胞レベルであることが考えられたため、成人肝細胞レベルまで成熟しない要因を検討したところ、c/EBPα及びHNF-6の発現量あるいは発現時期に原因があることが明らかになった。
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