脳梗塞は予後不良の疾病であり、意識障害・昏睡等を伴い、社会生活に支障を来たすケースが少なくない。現在、脳梗塞の診断にはCTもしくはMRIなどの画像診断が一般的であり、その精度・感度は著しく向上している。しかし、画像診断では患者状態の制約やコストパフォーマンスに関しての問題がある。従って、より簡便に、精度良く、低コストで脳梗塞を診断できる手段が必要である。しかし脳梗塞である可能性を強く示唆する生化学マーカーはこれまで存在せず、画像診断に頼らざるを得なかった。そこで本研究では血中・尿中アクロレイン及びその産生酵素を測定することによる脳梗塞診断マーカーの開発を目的とし、研究を行った。申請者らはこれまでに血中のアクロレイン量及びポリアミンオキシダーゼ活性が、脳梗塞の症状悪化と深く関連していることを見出し、現在これらのマーカーをより簡便に測定できる方法の開発を進めている。ポリアミンオキシダーゼに関しては、活性測定に1-2日要していたものを、ELISAに変更できるように抗体を作製した。また、より被験者の負担を軽くするため、尿中アクロレイン付加化合物の簡便な定量法についても研究を進めている。アクロレインは生体内でcarboxyethylmercapturic acid(CEMA)と3-hydroxypropylmercapturi cacid(HPMA)に代謝され、尿中に排泄されることから、これらに対する抗体の作製を試みた。HPMAは化合物として市販されており、この化合物に対する抗体を、ウサギを用いて作製することに成功した。
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