研究概要 |
胎盤における母体から胎児へのnucleosideおよびnucleobase(以下、nucleoside類)の供給は胎児の発達に重要である。重度ウイルス感染症の治療に用いられる、抗ウイルス薬などnulceoside analogの妊婦への投与基準を確立するためには、血液胎盤関門におけるnucleoside類とnucleoside類似薬物輸送の相互作用を明らかにする必要がある。本年度は、TR-TBT18d-1(妊娠後期syncytiotrophoblastモデル)におけるnucleoside類取り込みに関与するトランスポーターの推定と、取り込み輸送に対するnucleoside類似薬物の添加による影響および用量依存的な阻害効果を検討した。TR-TBT18d-1における[^3H]uridine及び[^3H]adenosineの取り込みを検討したところ、両者ともにNa+非依存性、DBMPR非感受性及び飽和性であり、ENT1及びENT2が主に寄与することが示唆された。更に、TR-TBT18d-1の[^3H]uridine及び[^3H]adenosine取り込みに対するnucleoside類似薬物の阻害効果及び濃度依存性を検討した。その結果、高濃度のcytrabine, zidovudine(AZT), amitriptyline, caffeine, nizoribine, vidarabineの添加により、両取り込みへの顕著な阻害効果が認められたが、臨床投与における血漿中遊離型薬物濃度においては阻害が見られなかった。したがって、これらの薬物は、妊婦へ投与された場合に胎児へのnucleoside類供給に影響を与えないと推察された。また、抗HIV薬のdidanosine(ddI)及びAZTの取り込みについて検討した結果、ddIにはENT2、AZTには未知のトランスポーターが関与することを明らかにした。
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