本年度は結核治療に用いる遺伝子製剤候補の設計及び作製を中心に行って来た。最近の研究からマクロファージ内における結核菌の処理にオートファジーという現象が利用されている可能性が示唆された。そのためまずIFN-γレセプター下流のシグナル伝達分子さらにはオートファジーに関与する分子をコードする遺伝子であるIRF1、STAT1、STAT6等の遺伝子製剤設計を行いクローニングした。またマクロファージはToll like receptor 2(TLR2)を介して結核菌を認識すると、IL-12、IL-18等のサイトカインを産生し周囲の免疫細胞(NK細胞等)に作用しIFN-γを産生させ、マクロファージ細胞を活性化するのでTLR2下流のシグナル伝達分子であるTRAF6をコードする遺伝子をPCR法により用いてクローニングし、発現ベクターCAT7-neoに組み込んだ。これにより候補製剤の準備ができた。次に遺伝子導入法の最適化を行った。マクロファージ細胞株を用いて検討を行ったところ通常の遺伝子導入法ではNucleofector system(amaxa社)以外ではほとんど導入されなかった。また我々の研究室で作製した遺伝子導入キャリアー(リポソーム、PLGA)はマクロファージに効率よく取り込まれたことから、これらを用いることが有用であることも示した。最終的には遺伝子製剤をこれらのキャリアーに封入し製剤化を試みる予定である。最後にマクロファージの活性化の指標となるオートファジーの検出、またiNOSの検出を遺伝子レベル、タンパク質レベルでの検出を試み、アッセイ法の最適化を完了した。以上から導入製剤、導入方法、アッセイ系が整い今後各遺伝子製剤の活性を調べる予定である。
|