研究課題
本研究課題では、白血病の薬物耐性獲得における薬物トランスポーターの寄与をタンパク質定量プロファイルに基づいて定量的に解明することを目標とした。昨年度の成果として、vincristine耐性白血病細胞株のトランスポーター発現プロファイルから、P-gpの薬剤耐性における重要な関与を定量的に示した。本年度は、臨床検体の解析を目的とし、vincristine耐性を示したイヌの白血化したリンパ腫におけるP-gpの発現解析を行った。免疫染色の結果、薬剤耐性を示した5例中3例のリンパ腫でP-gpは腫瘍内の毛細血管内皮細胞の血管腔側膜への発現し、腫瘍細胞に発現していないことを明らかにした。この結果は血管内皮細胞が薬剤耐性に重要な役割を担っていることを示しており、薬剤耐性を獲得した腫瘍組織内では血液腫瘍関門が構築され、薬物の組織移行を制限していることが示唆された。本研究の結果は血液腫瘍関門の重要性を示唆するものであり、臨床検体における薬剤耐性獲得機序の解明につながる重要な成果である。さらに本年度はトランスポーター定量法を発展させ、350種類以上に分類されているトランスポータータンパク質の迅速な定量法確立システムを構築した。本定量法では高感度なペプチドを測定対象とすることが重要である。そこで、高感度ペプチドのアミノ酸配列を解析し、ペプチド選択クライテリアを設定した。本クライテリアで選択したペプチドを定量解析したところ、10fmolまで定量可能な高感度ペプチドであることが示された。本クライテリアをヒトおよびイヌにおけるトランスポータータンパク質に適応し、高感度ペプチドのアミノ酸配列ライブラリーを構築した。このライブラリーはトランスポータータンパク質の大規模定量システムの基盤となる情報であり、網羅的トランスポーター定量システムを迅速に確立することが可能となった。
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Drug Metab.Dispos. 137
ページ: 1129-1137