本年度はin vitro、in vivo両面からマクロファージ貪食能に対するVAMP7欠失の影響について検討した.In vitroでの検討ではVAMP7欠失マウス(KOマウス)より取得した腹腔マクロファージにヒツジ赤血球を貪食させた際のLysosomeマーカーの局在を電子顕微鏡レベルでの解析を行った.銀増感法を用いて標識したPhagosome膜上のLysosomeマーカーの密度を比較した.電子顕微鏡で観察されたLysosomeマーカーのシグナル個数を単位膜あたりの密度として算出したところ野生型と比べてVAMP7欠失マウス由来のマクロファージで低い傾向がみられた.このことは貪食した異物を処理する過程で重要なPhagosome-Lysosome fusionにVIMP7が関係する可能性を示唆している.ただし、細胞間による差が大きいため、骨髄由来マクロファージでの検討がさらに必要と思われた.In vivoにおいてはマウスマラリアであるPlasmodium yoeliiをKOマウスに感染させ、感染率、生存日数について野生型マウスと比較した.この結果、感染後の生存日数、日ごとの感染率ともに野生型マウス群、KOマウス群の間で有意な差は認めなかった.またマラリア感染マウスの肝臓、脾臓を取得し、形態学的な解析を行った.光学顕微鏡レベルではHE染色像、マクロファージマーカーF4/80を用いた免疫染色像いずれにおいても野生型マウスとKOマウスで大きな変化は見られなかった.また電子顕微鏡での観察にてもどちらの群でも感染赤血球の貪食像が観察され、明らかな差は認めなかった. 以上からVAMP7欠失により細胞レベルでの異物貪食および異物処理能力に影響がある可能性が示唆されたが、in vivoにおける意義については今後の研究課題と考えられた.
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