本研究では、脳内の水の移動ルートおよびその発生過程に伴う変化を理解することを目的とし、脳におけるアクアポリン(AQP)水チャネルの分布局在を検討する。本年度は申請者が作製したAQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5の特異抗体を用いてラット中枢神経における分布を免疫組織化学的に検討した。その結果、AQp1とAQP4が分布することが確認された。AQp1は脳室脈絡組織に分布したが、脳実質には分布しなかった。AQP4は脳実質の広範囲に分布した。AQP4は脳の血管周囲の神経膠細胞終足に分布することが報告されているが、血管周囲に限らず広範囲に分布することから、その分布を詳細に検討した。血管のマーカーとして糖輸送体GLUT1(glucose transporter 1)、神経細胞のマーカーとしてNeuN(neuronal nuclei)、神経膠細胞のマーカーとしてGFAP(glial fibrillaly acidic protein)を用いてAQP4との蛍光二重染色をおこない脊髄から脳の全領域を検討した。その結果、AQP4は血管周囲に限らず、神経膠細胞全体に分布することがわかりつつある。さらに種々の神経核では個々の神経細胞の周囲を取り囲むような強いAQP4の免疫反応が得られた。そのほかにも非常に強い免疫反応が得られる領域があることがわかった。これらAQP4の分布がとくに多い領域では、とりわけ水の供給量が多いことが想定され、興味深い結果である。 AQP4の血管周囲の神経膠細胞終足への局在は、AQP4がアダプタータンパク質を介してアクチン細胞骨格と結合することで保たれる可能性が示唆されている。アダプタータンパク質の候補のひとつとしてRIL(reversion-induced LIM protein)に注目し、RILとAQP4との関係の解析もおこない論文として発表した。
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