研究概要 |
1.成体ラット下垂体前葉で発現するレチノイン酸代謝酵素(Cyp26a1,b1)遺伝子をクローニングした。得られた遺伝子断片からin situ hybridizationのプローブを作成することが可能となった。 2.昨年度までにエストロゲン誘発プロラクチノーマモデルラットでプロラクチノーマによりレチノアルデヒド脱水素酵素1(RALDH1)の発現が著しく減弱することが分かっていた。本年度ではエストロゲンによるRALDH1発現の抑制機序の一部を明らかにすることができた。正常下垂体前葉細胞の初代培養系で、1)17beta-estradiolはRLDH1を濃度依存的、時間依存的に抑制した、2)その抑制効果はエストロゲン受容体(ER)アンタゴニスト(ICI182,780)で阻害された、3)ER alphaの選択的アゴニスト(PPT)では抑制効果が見られたが、ER betaの選択的アゴニスト(DPN)では見られなかった。以上のことから、エストロゲンはER alphaを介してRALDH1発現を抑制することが明らかとなった。さらに、RALDH1はプロラクチン細胞と濾胞星状細胞で発現しているが、エストロゲンはプロラクチン細胞で発現するRALDH1を抑制することから、細胞の種類によりRALDH1の発現調節機構が異なることが考えられた。 エストロゲン誘発プロラクチノーマで腫瘍が形成され、それに伴うRALDH1の減少が、プロラクチン細胞でER alphaを介して引き起こされる可能性が示され、エストロゲンによるレチノイン酸合成酵素減少、それによるレチノイン酸の産生量の減少がプロラクチノーマ形成に関与する可能性が示唆された。
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