哺乳類では他の動物群と比べ、桁違いに大量の糸球体濾過を実現している。これは、糸球体内圧(血圧)が著しく高いにもかかわらず、糸球体濾過障壁が菲薄なことによる。糸球体の表面には足細胞と呼ばれる上皮細胞が存在するが、哺乳類の足細胞ではアクチン細胞骨格の高度化(アクチン束の出現)が生じており、高い糸球体内圧から菲薄な糸球体壁を保護している。このアクチン細胞骨格の高度化を実現するうえで鍵となるのが、アクチン結合蛋白質のシナプトポディンではないかと(現時点では)推測している。というのも、シナプトポディンは哺乳類足細胞のアクチン束に局在し、かつ足細胞特異的に発現することが知られているからである。そこで、シナプトポディンの発現とアクチン細胞骨格の高度化に関連があるかどうかを検討するため、アクチン細胞骨格の高度化がみられない動物種(ゼブラフィッシュ)においてシナプトポディンの発現パターンを検討した。データベース検索(BLASTサーチ)の結果、ゼブラフィッシュにおけるシナプトポディンホモログ(zfSynpo-1)が見いだされ、RT-PCR法によりzfSynpo-1は少なくとも脳、体幹骨格筋、腎臓において発現することが判明した。現在、zfSynpo-1が足細胞で発現しているかどうかをin situハイブリッド形成法により検討中である。また、通常足細胞のアクチン細胞骨格はbeta-細胞質型アクチンにより形成されるが、両生類(ウシガエル、イモリ)ではこのアクチンアイソフォームはほとんど発現しないことも明らかとなった。両生類では、アクチン遺伝子の重複により他の動物群より多くのアクチンアイソフォームを有している。したがって、両生類では他の動物群とは異なるアクチンアイソフォームが足細胞におけるアクチン細胞骨格の形成に関与していることが推測される。
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