ダウン症原因遺伝子Down Syndrome Critical Region 1 (DSCR1)の血管サイズ決定因子としての役割とその分子機構の解析を行った。我々は前年度までにアフリカツメガエルのDSCR1をクローニングし、その発現によって、intersomitic vessel付近の細い血管が5割ほど減少することを明らかにした。本年度は、DSCR1による血管の分岐掬制をさらに確定的にするために、1)Morpholino Oligonucleotideによるノックダウン実験、2)calcineurin阻害剤FK506、CsAによる解析を行い、これまで報告されていない、新しい血管の形成機構を明らかにした。これらの結果から、DSCR1が血管の形態を制御する因子であることを証明した。現在、これらのデータから作成した論文を投稿し、エディターの指摘に対応した追加実験を行っている最中である。 本研究の重要性は、DSCR1による「新規」の血管形成機構を示し、さらにその機構が血管の分岐頻度、さらには血管の形態を制御していることを明らかにした点にある。DSCR1の発現は分岐頻度の低い大動脈では高く、分岐頻度の高い末梢血管では低いことから、ほとんど全ての血管において共通の機構として機能していることが考えられる。DSCR1によって血管の分岐頻度を増減することができれば、血管の形態を自由に制御することが可能となり、大動脈疾患から末梢血管疾患まで、様々な血管に対応した治療法の開発が期待される。DSCR1が数少ない血管形成の負の内在性制御因子であることと考え合わせると、本研究の有用性が今後さらに発展することが期待される。
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