研究概要 |
心筋細胞のT管形成・維持の分子基盤を明らかにするために, 特にBARドメインを持つタンパク質に注目し解析を行った。T管は心室筋細胞に豊富に存在するが, 心房筋細胞には見られない。このことからT管形成に関与するタンパク質は, 心室筋, 心房筋の間で発現量が異なることが予想された。そこで心房筋・心室筋のRNAを用いたNorthern解析を行い, 各BARドメインタンパク質の発現量を比較した。ゲノム上に存在する既知のBARドメインタンパク質62種類の部分cDNA配列をRT-PCR法により単離し, プローブとした。その結果, 心室筋特異的に発現する遺伝子は存在しなかったが, 心房・心室の両方で強く発現している数種類の遺伝子が存在したため, これらに関しては更に詳細な検討を行った。また多くのBARドメインタンパク質と相互作用することが知られるN-WASPについても解析を行った。骨格筋のT管形成に関与するAmphiphysin 2を培養細胞に強制発現させると, 細胞内に管状の構造が形成されることが知られている。そこで心室筋で強い発現が見られた遺伝子群について, 同様の活性の有無について検討を行った。候補遺伝子群の全長cDNAをRT-PCR法により単離した後, GFP融合タンパク質としてCOS-7細胞に強制発現を行った。その結果, いくつかの遺伝子について管状構造物を形成する活性が見られたものの, Amphiphysin 2と比較するとその作用は弱いものであった。また候補遺伝子の一つであるPacsin3およびN-WASPの免疫染色を行った結果, 両タンパク質が心室筋細胞においてT管状の格子構造に局在することを見いだした。またN-WASPは成長に伴うT管構造の発達に連動して, その局在を変化させることが明らかになった。T管形成・維持にこれらの遺伝子がどのように関与しているかについて現在検討中である。
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