羊膜は羊水の質的・量的な調節をおこない、胎児の発育環境を維持する袋状の組織である。特に羊膜上皮層は羊水と直接しているため、胎児によって羊水中に分泌される成分を感知、受容および選択的に透過している。サーファクタントプロテインや羊水マクロファージ由来の炎症性サイトカインは羊膜上皮層を通過し、絨毛膜や子宮筋層に到達して陣痛や分娩を誘発する。しかしながら、妊娠後期にこれらの分娩誘発成分がどのようなメカニズムで羊膜上皮層を通過しているのかはわかっていなかった。本研究の結果、羊膜上皮層にはタイトジャンクション(TJs)が存在し、このTJsは羊膜上皮細胞間の傍細胞経路を通過する物質移動を制御していることが明らかになった。羊膜上皮のTJs構成成分であるクローディン-3および-4は妊娠後期に羊水中で増加する炎症性サイトカインであるIL-1beta、IL-6あるいはTNF-alphaによって減少し、さらにTNF-alphaはTNFR1を介して羊膜上皮細胞のアポトーシスを誘導していた。これらの結果として羊膜上皮層のTJsは脆弱化し、その物質制御能を低下させることが明らかになった。一方、妊娠中期までの羊膜上皮層ではプロゲステロンによってクローディン-3および-4の発現が亢進され、TJsのバリア機能が維持されていることもわかった。すなわち、羊膜上皮層のTJsはプロゲステロンや炎症性サイトカインなどの生理活性物質によってその物質透過性を変化させる能力を備えており、絨毛膜羊膜炎による早産、あるいはサーファクタントプロテインや羊水マクロファージ由来の炎症性サイトカインが関与する自然分娩のメカニズムに深く関与していると考えられた。
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