本年度は、昨年度の研究によって急性単離白色脂肪細胞に機能的に発現することが明らかになった容積感受性クロライドチャネル及びマグネシウムイオンによって抑制される非選択性カチオンチャネルに関して、電気生理学的・薬理学的性質、病態への関与について検討した。 糖尿病モデルマウスを用いた検討により、容積感受性クロライドチャネルは、糖尿病マウスの白色脂肪細胞で正常マウスの半分程度まで発現量が減少していることが明らかとなった。このチャネルの発現減少により、糖尿病マウスの白色脂肪細胞の細胞容積調節機能は傷害されていることも明らかとなった。糖尿病マウスを投薬によって治療すると、このチャネルの発現量が回復したことから、容積感受性クロライドチャネルの発現と糖尿病病態の関連が示唆された(論文発表)。 白色脂肪細胞に発現する非選択性カチオンチャネルは、細胞内・細胞外のマグネシウムイオンを減少させることで活性化される。このチャネル電流は2-aminopridineによって抑制され(IC_<50>=92μM)、細胞内ATPの枯渇によってrun downする。これらの性質から、このチャネルの分子実体はTRPM7であると考えられ、白色脂肪細胞にTRPM7の発現していることをRT-PCRによって確認した。本年度予定していたsiRNAによる分子同定は、急性単離白色脂肪細胞への導入が成功しなかったため、今後は白色脂肪細胞の初代培養もしくは脂肪細胞株である3T3-L1を用いて検討する。また、細胞内イオンイメージングに関しても、これらの培養細胞を用いて行う必要がある。白色脂肪細胞においてこの非選択性陽イオンチャネルを活性化しうる生理刺激として、β受容体アゴニスト(エピネフリン、BRL37344)、インスリン、高グルコース、ATPを検討したが、ホールセルパッチクランプ下では、これらによる活性化は観察されなかった。
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