KCNQ1は心臓などで発現している電位依存性カリウムチャネルである。単独でもカリウムチャネルを構成することが可能であるが、1回膜貫通型修飾サブユニットであるKCNEと共発現することで、その性質を大きく変える。KCNQ1-KCNEl複合体からなる電流は心臓の活動電位のペースを調節する役割を担っており、KCNQ1・KCNE3複合体は常に電位非依存的で常に開状態にあるカリウムチャネルを構成して腸などでカリウムイオンの輸送を行っている。しかしながらKCNEがどのようにしてKCNQ1の機能を修飾するのかはよくわかっていない。また同じサブファミリーのメンバーでありながら、それぞれのKCNEタンパク質がどうしてこれほどまでに異なる修飾機能を持っているのかも良くわかっていない。 海産無脊椎動物であるカタユウレイボヤのゲノムにはKCNE遺伝子が存在しないため、カタユウレイボヤのKcNQ1ホモログであるCi-KCNQ1はKCNE1によって機能修飾を受けないのではないかと予想し、昨年度はKCNE1によるチャネル機能の修飾において、ヒトのKCNQ1のどの部位が重要であるかを同定した。今年度は同様の手法を用いることで、KCNE3による機能修飾に大事な部位を同定することを試みた。そして、KCNQIのボア領域が機能修飾に重要であったKCNE1に対し、KCNE3においては電位センサードメインにあたるS1セグメントが重要であることを示唆するデータを得た。KCNEタンパク質それぞれは、KCNQ1上の異なる部位を標的にすることで異なった修飾機能を持っていることを明らかにすることができた。本研究で得られた知見は、今後のKCNQ1チャネルの修飾機構と複合体構成のメカニズムの解明に向けて、重要な足がかりになると思われる。
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