本研究課題において申請者はミクログリア細胞の神経可塑性に対する関与を検討した。 申請者はまず大脳皮質第5層錐体細胞にEGFPを発現する遺伝子改変マウスとionized calcium-binding adaptor molecule 1(IBA-1)promotorの下流にEGFPを導入した遺伝子改変マウスを交配させ、得られた遺伝子改変マウスは錐体細胞およびマイクログリアに選択的に蛍光標識される個体を用い、2光子励起顕微鏡を適用し同動物脳を生体麻酔科において観察を行った。またミクログリア細胞の障害脳における神経可塑性への関与も検討するため、レーザーを用いた脳虚血モデルマウスの作成を行い、正常動物との比較を行った。 (結果) 正常脳においてミクログリア細胞は1時間に一度5分間神経シナプス部に接触し、この接触は神経活動に依存し、低体温や感覚除去により神経活動を減弱させるとその接触頻度は低下することを証明した。またシナプス特異的に接触することを、同一樹状突起状のシナプス接触を観察することにより証明した。この接触様式が障害の際にはどのように変化するかを検討するため、レーザーフォトスロンボーシスを用いて、マウスの中大脳動脈に脳梗塞を非侵襲的に作成し、そのペナンブラ領域における接触様式を観察した。ペナンブラ領域においてミクログリアーシナプス結合は正常脳に比較して接触時間が延長することを見いだした。この延長の結果を検討するため継続して観察を行ったところ、しばしば接触後のシナプスの消失を観察することに成功し、シナプス可塑性のミクログリア細胞の関与を示唆することに成功した。 本実験において脳障害時におけるあらたな治療標的としてミクログリア細胞の存在を見いだすこととなった。
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