【実験1】野生型(WT)およびレプチンを欠損するob/obマウスに寒冷暴露を明期または暗期に行った。WTにおいては明期と暗期ともに、寒冷暴露によって深部体温(Tb)は変化せず、酸素摂取量(VO2)は有意に増加した。ob/obにおいて、寒冷暴露によりTbは有意に低下した。明期と暗期の間で有意な差は認められなかった。寒冷暴露によってVO2は増加したものの、WTと比較して有意に低かった。c-Fos発現は、視床下部のいずれの神経核においてもWTとob/obの間で有意な差は認められなかった。【実験2】WTにおいて、腹腔内にグレリンを明期または暗期に投与し寒冷暴露を行った。グレリンを投与したWTにおいて、明期の寒冷暴露によってTbは有意に低下し、VO2は増加したものの有意に低かった。暗期ではTbは低下せずVO2は有意に増加し、生理食塩水投与との間に有意な差は認められなかった。c-Fosは、視交叉上核において明期にグレリン投与によって有意に増加した。室傍核において、グレリン投与のみではc-Fosは見られなかったものの、グレリン投与で寒冷暴露を行った暗期においては、c-Fosは有意に増加した。【結論】レプチンの欠損は体温調節反応を弱めるが、絶食時に見られる時間特異的な体温調節反応の減弱には関与しないことが示唆された。一方グレリンの増加は、時間特異的に明期にのみ体温調節反応を弱める可能性が示唆され、絶食時に見られる時間特異的な体温調節に関与する可能性が考えられた。摂食ペプチドのグレリンが体温調節および概日時計に直接働きかけることを初めて証明し、恒常性調節機構における調節物質としての役割を浮き彫りにした。
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