研究概要 |
2年度目は光誘導かつ概日リズム変動を示すDusp4遺伝子のENU誘発点突然変異スクリーニングを実施した。Dusp4遺伝子領域内にはC57BL/6JとDBA/2Jマウスの系統間SNPが存在し、TILLING法による変異解析は不可能であった。そこでHRM法で4エクソン領域を増幅するPCRプライマーを設計し、ENU誘発点突然変異マウスDNAライブラリー6856匹に対して変異スクリーニングを実施した。その結果、1年度目に発見した87番目のロイシンをグルタミンに置換する変異以外、発見は出来なかった。変異発見効率は8.2Mbpに1変異となり、平均の約1/8ほどの値であった。この結果はORF内部にあった系統間SNPの影響で、点突然変異発見効率が著しく低下したと推測される。Dusp4遺伝子と同様に光誘導かつ慨日リズム変動を示すSlc39a6遺伝子のENU誘発点突然変異スクリーニングを行ったところ、541番目のチロシンが終止コドンに変異したマウスを発見した。この変異体を個体に復元し、RT-PCRによりslc39a6遺伝子の発現を確認した結果、発現レベルは野生型の5%以下に低下していた。野生型と変異型における慨日リズム周期を測定したところ、個体レベルによる異常は確認出来なかった。変異型において、他の異常を検査したところ、オス変異型マウスのみ、妊性能力の著しい低下を発見した。マウスの妊性は日照時間と強い相関があり、また概日リズムも光によって強く制御されていることから、この発見は極めて興味深い。今回の研究から、光誘導かつ概日リズム変動を示すDusp4, Snk, Slc39a6遺伝子の変異体を6種類発見した。しかしSnk, slc39a6変異体を調べた結果、各遺伝子の慨日リズムへの関与は証明できなかった。一方、slc39a6遺伝子は雄性妊性能力に重要な働きを示唆するデータが新たな知見として得られた。
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