マウスへのアルドステロン投与は血圧上昇や腎肥大、心肥大などを誘導する。しかしNCX1-KOマウスやNCX阻害剤を投与したマウスにアルドステロンを投与すると、心肥大のみが抑制されることを前年度に見出した。そこで心臓における活性酸素産生について検討したところ、アルドステロン投与により血管周囲特異的な活性酸素産生が認められ、その局在性はアルドステロン投与による心筋線維化が観察される場所と一致していた。これら応答と炎症性細胞との関連を調べるために、アルドステロン投与したマウス心臓を炎症性細胞マーカー(CD45)抗体にて染色したところ、野生型マウスではアルドステロン投与量に比例して炎症性細胞の浸潤量が増加していたのに対し、NCX1-KOマウスでは炎症性細胞の浸潤が全く認められなかった。これらの結果よりアルドステロン誘導性心肥大には炎症性細胞が深く関与しており、炎症性細胞の浸潤およびその他機能を制御する分子の1つとして、NCX1が重要な役割を担っていると考えられた。NCX1阻害剤には心肥大抑制や炎症抑制など新たな治療応用の可能性があると推測された。 一方遺伝子改変マウスの作製については、当初CD68プロモーターによる貪食細胞特異的NCX高発現マウスの作製を試みたが、その発現量は十分でなく、検討に用いるには不適当であった。そこでCD11bプロモーターを用い、さらにTet-on systemを用いたコンディショナル・トランスジェニックマウスの作製を行い、マウスを得るに至った。今後貪食細胞の機能とNCX、カルシウム動態に関する研究を遂行するための有効なツールを得られたと考えている。
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