低酸素応答で形成される低酸素コンプレックスの構成分子の同定 低酸素応答のシグナル伝達機構の解析を、プロリン水酸化酵素PHD3が形成する低酸素コンプレックスに着目して進めた。培養細胞にPHD3を外来的に発現させ、免疫沈降法によりPHD3コンプレックスを精製した。精製したコンプレックスを二次元電気泳動で展開し、質量分析法により構成タンパク質の決定を行った。一連の解析11回の試行で108のタンパク質スポットを決定した。これらのスポットの情報をデータベースと照合し、タンパク質の機能に基づき分類した。繰り返し得られるもの、異なるアプローチで同様に得られるものを指標として、三つの分子を主たる解析対象として絞り込んだ。これら三分子に関して遺伝子クローニングを行い、その発現を培養細胞で検証した。 酸素センシング機構に働くタンパク質 候補タンパク質の一つ、ピルビン酸脱水素酵素PDHに着目して解析を進めたところ、PHD3とPDHがin vitroおよびin vivoにおいて相互作用することが明らかになった。また両タンパク質はゲル濾過クロマトグラフィーにおいて、同等の分子量の画分でピークの一つを形成した。さらにPDHの活性をin vitroアッセイを用いて測定したところ、PDH活性がPHD3の発現抑制により有意に減少していることが明らかになった。このことから低酸素コンプレックスの役割の一つは、生体内のエネルギー代謝調節であることが考えられる。低酸素コンプレックスがエネルギー代謝調節に働く分子機序を解明するために研究を継続している。
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