研究課題
Bcl11b遺伝子はマウス胸腺リンパ腫から単離されたがん抑制遺伝子であり、我々は大腸がんモデルマウスApc^<Min/+>とBcl11b^<+/->F1マウスを用いた発がん実験により、ヒト14番染色体上の未同定の大腸がん抑制遺伝子がBcl11b遺伝子であることを示す結果を得た。これまでにBcl11bタンパク質は幹細胞や増殖性の高い細胞(TA細胞)の多いcrypt周辺での発現が確認され、Apc^<Min/+>マウスの腫瘍解析からBcl11bはハプロ不全ながん抑制遺伝子であることを明らかにした。ヒトの大腸がん検体におけるBcl11b遺伝子変異についても複数確認した。またBcl11bの機能低下マウス(Bcl11b^<M101891/-)において大腸の肥厚化(crypt領域の肥大)を見いだし、この変異体マウス腸管の肥厚化は細胞増殖の亢進をともなっており、がん化しつつある状態と考えられた。またM x-cre;Bcl11b^<lox/KO>マウスを用いたCKO実験ではpIC投与後10日でcryptでのBcl11b発現消失は見られたものの、そのcryptにおける細胞増殖に対しては大きな影響は認められなかったが、pIC投与後長期間(4ヶ月)経った個体でもBcl11b発現がほぼ消失したcrypt(ΔC/Δflox)が確認でき、crypt長の伸長が認められた。以上の結果は、腸上皮の分裂速度を考慮するとBcl11bが腸上皮間細胞に発現し、その機能が適切な腸管crypt長の維持に必要であることを示唆する。Bcl11b+/-と+/+のγ線(12Gy)照射後のcrypt-villi再生過程を比較すると、+/+では細胞増殖低下(細胞周期停止)が起きているが、+/-では増殖傾向が維持されていることがわかった。このことはBcl11bがTA細胞の過剰分裂の抑制あるいはDNA複製/修復チェックポイントに関わる可能性を示すといえる。現在、髄細胞におけるBcl11bの下流因子の確認・検証を行っている。
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