細胞接着は組織や器官の構築において基本となる重要な現象であり、単に細胞同士の接着のみならず細胞の増殖、極性、運動等の様々な重要な細胞機能に必須の役割を担っている。その中で、細胞の接着と増殖の制御機構の間には両者の綿密なクロストークが存在し、細胞増殖が厳密に調整されており、このような細胞接着と増殖の相互制御機構が、生理的には器官形成や創傷治癒の過程に重要であることが分かってきている。さらかその破綻は細胞の癌化へと繋がっている。しかし、その詳細な分子機構は依然として不明な点が多く、本研究においては、その解析を行っている。本年度の研究実績の概要は以下のようである。 1、IQGAP3の細胞内での機能解析 以前の研究により、IQGAP3は細胞の増殖に関与することが示唆されていた。さらにその下流のシグナルを明らかにすべく、研究を進めた結果、癌遺伝子であるRasとの関与が認められ、Rasの活性化を調節する機能を有することが示唆された。今後はさらにこの点について解析を進める予定である。また、細胞を用いた栄養飢餓状態からの回復過程におけるIQGAP3の役割について形跡を進めている。 2、IQGAP3ノックイン・ノックアウトマウスの作成 IQGAP3ノックアウトマウス作成の為、以前、ES細胞にてgene targetingを行い、複数個の有望なクローンを得ていた。そのES細胞を用いて、キメラマウスの作成を行い、キメラ率の高いキメラマウスを得た。さらかそのマウスよりヘテロのマウスが得られている。今後は、さらにかけ合わせを重ねることにより、将来的にノックアウトマウスを得るように進めている。
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