研究概要 |
前年までに研究代表者は、低親和性のロイコトリエンB4(LTB4)受容体BLT2の内在性リガンドとして、新規生理活性脂質12-HHT(12-ヒドロキシ-ヘプタデカエノイック酸)を同定した(Okuno, JEM, 2008)。12-HHTはシクロオキシゲナーゼ代謝物として発見されたが、機能未知とされていた分子である。マウス腸においてBLT2が発現していること、また12-HHTが小腸に多く存在していたことから、BLT2遺伝子欠損マウスのデキストラン硫酸塩(DSS)大腸炎モデルを用いた解析を行った。その結果、BLT2遺伝子欠損マウスが野生型マウスに比べて、重篤な体重減少と炎症の亢進を示した。これらの結果は、BLT2アゴニストの12-HHTが、未だ原因が明らかでないクローン病等の治療に役立つ可能性を示唆している(論文投稿中)。 また研究代表者は、Gタンパク質共役型受容体の細胞内C末端に存在する新規ドメインとしてへリックス8を同定し、BLT1のヘリックス8が受容体活性化後の受容体不活性化に関わることを示し、既に報告している(Okuno JBC, 2003, 2005)。今回、BLT2のヘリックス8の変異体を複数作製し、野生型受容体とともに過剰発現細胞を樹立し、受容体の細胞内局在やリガンド応答性について解析した。その結果、BLT2ヘリックス8が、正しい立体構造を保つのに必要であり、細胞膜輸送に関わることを明らかにした(Yasuda, Okuno, FASEB J, 2009)。
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