1. 小脳及び大脳皮質におけるPLCδ3/RhoAシグナルによる神経突起伸長機構の解析 PLCδ3は小脳や大脳皮質に多く発現が見られる。小脳より顆粒細胞を調製し、PLCδ3を一過的にノックダウンすると分化誘導時における神経突起の形成が阻害されることを明らかにした。また大脳皮質発生過程におけるPLCδ3の役割を明らかにする目的で、子宮内エレクトロポレーション法により胎生14日目においてPLCδ3をノックダウンすると、大脳皮質板層形成時における皮質ニューロンの移動が抑制されることを見出した。また大脳皮質層における神経細胞の移動は神経突起伸長の阻害に起因する可能性が示唆された。Neuro2a細胞を用いた解析により、分化特異的にPLCδ3はRhoA活性を低下させることを昨年度に明らかにしている。大脳皮質板形成時の神経細胞の分化においてはRhoA活性が低下することが既に報告されており、現在大脳皮質ニューロンの分化時においてPLCδ3のノックダウンがRhoA活性に及ぼす影響について解析を行っている。 2. 神経突起伸長に関わるPLCδ3結合蛋白質の同定 質量分析法によりFLAG-PLCδ3を発現させたNeuro2a細胞を用いてPLCδ3結合蛋白質を探索した結果、IQGAP1が同定された。IQGAP1は、アクチンフィラメントの構築を制御することにより神経細胞の分化や神経突起伸長を制御することが知られている。IQGAP1はPLCδ1には結合しないことからPLCδ3特異的な神経細胞の分化誘導シグナルに関与する可能性が高い。現在、PLCδ3/IQGAP1相互作用の神経機能における生理的意義を明らかにする目的でPLCδ3/IQGAP1の相互作用部位を同定すると共に結合部位に基づくペプチドやsiRNA等を用いた機能阻害実験を行っている。
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