研究概要 |
骨髄単球由来ミクログリアガアルツハイマー病の病態に伴い脳内に浸潤することが報告されている。脳内へ移行した組胞はアルツハイマー病発症の物質的基盤であるアミロイド沈着体を貧食能などにより積極的に除去する働きを示すと考えられている。昨年度は、生体内ビデオ蛍光顕微鏡を用いた脳内細胞イメージング技術を確立し末梢投与ミクログリア細胞のマウス脳内におけるライブイメージングを行った。本年度は脳移行性ミクログリアを外来遺伝子脳内搬送体としての利用を検討するため、これらの細胞に効率良く遺伝子を導入発現させるシステムの開発を検討した。 マウスミクログリア細胞株(MG5)にZsGreen蛍光タンパク質遺伝子を組み込んだ各種ウィルスベクター(1x10^8 particles)を感染させ60時間後にZsGreen陽性細胞数を測定した。その結果、マウスポリオーマウィルPY2スベクターを用いた時、選択的に90%以上の細胞に外来遺伝子を発現させることが確認された。サルポリオーマウィルスSV40,JC1,JC2ヒトポリオーマウィルスJC,BK,向Bリンパ球パポーバウィルスLPV2,LPV2REP,サルパポーバウィルスSA12,マウス向肺ウィルスKiham、いずれのベクターも30%以上の細胞発現効率を示さなかった。マウスポリオーマウィルPY2スベクターの選択的な高効率遺伝子発現結果はこのベクターを用いたシステム構築が有用であることを示した。 脳移行性細胞にポリオーマウィルスPY2ベクターを用いて遺伝子を脳内搬送させる細胞医薬の技術基盤の提供が今後期待され。本研究で得られたADモデル動物における知見および結果を今後スケール拡大したヒト臨床サンプルの使用による臨床研究へ発展させることが強く望まれた。
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