研究課題
我々はTRPV2が正常細胞のみならず、メラノーマを始めとする様々な悪性腫瘍細胞に高発現していることを見いだした。メラノーマは転移を起こしやすい癌細胞の代表である。そこで我々はメラノーマを実験モデルとし、癌細胞の転移におけるTRPV2の病態生理学的意義を明らかにするとともに、TRPV2を癌細胞の転移を阻止する分子標的とするための研究を行った。第一にメラノーマにおけるTRPV2チャネルの発現、調節機構を明らかにし、細胞遊走における意義を明らかにした。具体的にはyeast two-hybrid法によりTRPV2と相互作用する蛋白を単離した。これにより得られた候補蛋白MAEAは赤血球の脱核の際赤血球とマクロファージとをつなぐために関与する因子であった。in vitroでTRPV2とMAEAが相互作用することを証明した。第二にTRPV2チャネルの有効な抑制法を確立し、それを用いてin vitroでの遊走、さらにはin vivoでの転移を阻止する方法の確立を行った。予備実験としてTRPV2の阻害薬であるルテニウムレッドによりメラノーマ細胞の遊走能が低下することを確認した。次にドミナントネガティブ型TRPV2をメラノーマ細胞に導入し、遊走能の検討を行った。ドミナントネガティブ型TRPV2は正常型TRPV2と同様に細胞膜に局在した。しかし、wound healing assayにより両者に優位差は見られなかった。今後、新たなTRPV2チャネルの有効な抑制法を確立し、メラノーマ細胞の遊走を抑制する機構を明らかにする。
すべて 2009
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PLos One. 4
ページ: E5106