研究課題
本研究課題は、申請者が開発した微量脂質メディエーターの一斉定量系を用いて、各種病態における脂質メディエーターのプロファイリング解析および産生パスウェイ解析を行うことにより、脂質メディエーターと疾患との関連について、新たな知見を得ることを目的として実施したものである。マウス細胞質型ホスホリパーゼA2欠損マウスを用いたカイニン酸てんかんモデルにおける脳内脂質メディエーターのプロファイリング解析の結果、細胞質型ホスホリパーゼA2非依存的脂質メディエーターメカニズムの存在が示唆された(未発表)。本新規代謝経路については、現在詳細な解析を継続中である。また、申請者の解析技術を用いた研究により、以下に示す代表例のように、脂質メディエータープロファイリングが疾患メカニズムの解析に有用であることが示された。マウス多発性硬化症モデルにおける脊髄中の脂質メディエーターの包括的プロファイリングにより、疾患のステージと脂質メディエータープロファイルの相関解析が可能となり、急性期にプロスタグランジンE2が重要であることが示された。敗血症のマウスモデルであるCLPモデルでは、炎症性サイトカインの変動に先立ち特徴的な脂質メディエータープロファイルの変化が見られること、12-HETEがcPLA2α非依存的に産生されている可能性を見いだした。これらの例から、申請者の方法論が、実際に疾患における脂質メディエーターの機能解析における、新しいアプローチとして有用であることが確認された。本研究を発展させ、臨床サンプルの解析などを行うことにより、ヒトの疾患メカニズムの解明に応用可能であると考えられる。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 106
ページ: 21807-21812
Biochem.Biophys.Res.Commun. 390
ページ: 103-108
Nature Med. 12
ページ: 1426-1430