Cyclin D1(D1)は細胞の足場非依存性増殖を誘導できるがん遺伝子の1つであり、特に乳がんの発症や悪性化に関与すると考えられている。興味深いことに、D1の細胞内局在が接着に依存しており、接着状態で見られるD1の核局在が接着喪失と共に細胞質へと変化することを見出した。本研究では、接着依存性D1核局在制御機構について、細胞接着斑蛋白質Hic-5の酸化ストレス感受性シャトル機構が関与することを示し、さらに、その生物学的意義として、足場依存性増殖能、および細胞のがん化過程との関連性を検討した。その結果、Hic-5によるD1核局在化機構は、接着細胞でのみD1の核局在を許容することにより、足場非依存的な増殖を妨げ、細胞増殖の足場依存性を保障する機構であることが示された。また、癌遺伝子rasによる細胞の足場非依存性増殖能獲得にD1の核局在の接着依存性喪失が関与していることを見出した。
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