研究概要 |
大脳基底核ネットワークにおける薬物依存症の分子病態を研究するために、大脳基底核の神経経路特異的に神経機能調節するシステムを開発した。直接路の中型有棘細胞にはサブスタンスP(SP)が、間接路の中型有棘細胞にはエンケファリン(Enk)がそれぞれ特異的に発現する。そこでSP遺伝子β-preprotachykinin AあるいはEnk遺伝子preproenkephalin Aの上流域のプロモーター約2kbpと、テトラサイクリン依存性転写因子tetracycline-repressive transcription factor(tTA)をアデノ随伴ウィルスベクターpAAVに組み込んだ。作製した遺伝子組み換えAAVをtetracycline-responsive element(TRE)の下流にCMVをプロモーターとしてEGFPと破傷風菌毒素tetanus toxin(TN)の融合タンパクを発現させる遺伝子を持つTNトランスジェニックマウスの線条体に打ち込み、線条体神経細胞に感染させた。感染させた線条体をGFPとSP,Enkの前駆体であるPPTA, PPEの抗体で二重免疫組織染色を行うと、GFP-TNは目的の神経細胞に確認された。このGFP-TNはDOX投与4週間で消失した。すなわち、DOX ON/OFFによって、可逆的に神経伝達を阻止する方法(Reversilble neurotransmission bloking; RNB法)を大脳基底核の直接路あるいは間接路において確立した。今後、薬物依存時の大脳基底核ネットワークの分子病態生理を解析するために、両側の線条体あるいは側坐核にAAVを投与したマウスの依存性薬物に対する急性及び慢性反応を、行動量測定・条件付け場所嗜好試験を用いて調べる。
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