研究概要 |
本研究は、加齢に伴う卵細胞核のエピゲノム状態変化のスクリーニングを行った。具体的には、DNAシトシンのメチル化状態に着目し、卵細胞成熟過程でDNAメチル化が確立される事が知られている10ヶ所のインプリンティング遺伝子のDMR (differentiated methylated resion、インプリンティング遺伝子の発現制御に関わる特異的DNAメチル化領域)、3ヶ所の反復配列について、加齢マウス(43週齢±3週)と若年マウス(8週齢±2週)の卵子ゲノムを用い、bisulfite sequence法・COBRA法解析,pyrosequencing法によるDNAメチル化状態の定量解析を行った.これらの解析結果から、加齢マウスではインプリンティング遺伝子の制御領域の一部が低メチル化傾向になる事が明らかになった。このようなDNAメチル化異常はインプリンティング遺伝子の発現を乱す事、また、インプリンティング遺伝子は胚や胎盤の発生分化に重要な役割を担う事から、加齢によるDNAメチル化異常の妊孕性低下への影響が示唆された。 また、老化卵子におけるmiRNA量変化の解析を行った。加齢マウスと若年マウスの卵子のtotal RNAを用い、micro-arrayによる解析を行った。加齢及び卵子成熟におけるmiRNAの発現量の変化について、real-timePCR法にて確認、検討作業を行った。加齢変化によるmiRNAの合成低下、卵子成熟に関わる可能性があるmiRNA clusterの存在が示唆された。miRNAが胚発生に必須であることはすでに示されているが、具体的な役割については不明であり、今後その解明の一助になると期待される。
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